正しい答はわかりませんので、個人的な考え、感じ方みたいなものを書いてみます。
すみません、多分お役には立たないと思います。
「こうちゅう」というのは、確かにわかりやすい読みではありませんね。
漢語と言うのは、音だけでは意味がとりにくいことが多いです。
許されるなら「くちのなか」とでも書いてしまいたい気分です。…なかなかそうもいきませんが。
ただ、食事やお酒の話であるなら、前後関係から推測できるのではないかとも思います。
きっと、その類のことはたくさんあるのでしょう。
うまく訓読みできることのほうが少ないのではないでしょうか。
それから、「こうちゅう」と「くちじゅう」は、少し違う意味ではないかと思います。
「こうちゅう」は「口の中」です。
「くちじゅう」は、これももちろん「口の中」なんですが、「口の中全体」みたいな意味合いだと思います。
「中」を「じゅう」と読むと、たいていそんな意味になります。
「日本じゅうに棲息している」と言うと、日本のどこにでも、という意味です。
「部屋じゅうに落ちている」と言うと、部屋の中の1箇所ではなく、部屋全体に落ちていなければなりません。
「体じゅうに傷を負う」と言うと、どこか一部ではなく、全身くまなく、という感じです。
それでいくと、「こうちゅう」だと、まさに、口の中に風味が広がるんですが、「くちじゅう」だと、口の中全体に、隅々にまで広がる感じでしょうか。
この場合には「広がる」という言葉があるので、起こることはどちらでも一緒なんだけれど、ただ、ニュアンスがちょっと違いそうです。
「くちじゅう」だと、隅々に行きわたる、その到達点がより強調されている気がします。
辞書に「くちじゅう」の読みがないのは、この字をそう読まないということではないと思います。
たとえば「世界中」「街中(まちじゅう)」「体中」などの見出し語がないのと同じで、「じゅう」と読む場合の「中」が接尾語だか造語要素だかで、そういうものがくっついた状態の言葉は、普通、見出し語にはしない、ということだと思います。
うまく言えないんですが、「こうちゅう」と「くちじゅう」は違う言葉なんです。
少なくとも、文法的には、「こうちゅう」は全体で名詞であり、「くちじゅう」は名詞+接尾語(or造語要素)なので、別の言葉なんですが、たまたま(?)両方とも「口中」と書くし、「風味が広がる」という今回のケースでは、どちらと解釈することもできそうだ、ということなんだと思います。
そして、この場合にどちらがいいかは、文脈というか、全体の雰囲気の中で判断するしかないと思います。
書いた人は、どちらのつもりだったんでしょうね?