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[No.4760] 廻り合せの切れ続きについて 投稿者:sumakko   投稿日:2019/05/05(Sun) 23:23:05

平成の時代は、色々と御教示を賜りありがとうございました。令和の時代もよろしくお願い致します。
現在、点訳中の作品で次のような箇所があります。
……俺達が国境に行くのは、多分、俺達の家族が後方で安眠するためには、そうすることが必要なんだ。そういう廻り合せになったんだとな。……(……は本文外)
上記の「廻り合せ」についてですが、「まわりあわせ」、「めぐりあわせ」と、どちらでも読め、意味も同じですが、主観的には、「まわりあわせ」と読みたいと考えています。
「まわりあわせ」の切れ続きは、表記辞典、ナビにはないのですが、「めぐりあわせ」はナビでは「メグリアワセ」となっています。3拍+3拍の語ですが、説明では複合動詞からの転成とのことです。
まわりあわせも同意義語であることから、巡り合わせに準じて「マワリアワセ」になるかと思っています。

一方、「マワリアワセ」と続けるには、「まわりあう」、又は「まわりあわせる」という複合動詞が前提になるという考え方もあります。しかし、「まわりあう(あわせる)」という言葉は、日常的によく使いそうで、いざ用例を考えてみますと、適切な用例が思い当りません。皆さんは、どういった場合に、「まわりあう(あわせる)」という言葉を使われるでしょうか。

また、ナビでは「隣り合わせ」はナビでは「トナリ■アワセ」となっているのですが、「隣り合う」という複合動詞があるのに、なぜ「トナリ■アワセ」なるのか、よくわかりません。
皆さんの、お考え、実例等を、部分的でもよろしいですので御教示下さい。よろしくお願いします。


[No.4761] Re: 廻り合せの切れ続きについて 投稿者:みなかみ  投稿日:2019/05/06(Mon) 10:44:41

 「となり■あわせ」は表記辞典にもありますね。にもかかわらず
私のミニデータベースでは
  「となり■あわせ」「となりあわせ」療法あり:1タイトル
  「となり■あわせ」:4タイトル
  「となりあわせ」:5タイトル
と揺れています。
 「まわり?あわせ」は
  「まわり■あわせ」:1タイトル
  「まわりあわせ」:1タイトル
 そして「めぐりあわせ」は表記辞典6版の「あわせ」のところにありますが
  「めぐりあわせ」:13タイトル
  「まわり■あわせ」:3タイトル
です。
 まあ、表記辞典にあるのですから「めぐりあわせ」「まわりあわせ」としてよいのでしょう。


[No.4762] Re: 廻り合せの切れ続きについて 投稿者:sumakko   投稿日:2019/05/06(Mon) 13:07:21

みなかみさん、いつものことながら、早速のご回答ありがとうございます。
ついつい、横着して、ナビを先に見てしまいます。
案外、揺れがあるのですね。
表記辞典の第5版では、「となり■あわせ」は記載がありますが、「めぐりあわせ」は「あわせ」の項にも記載がないようです。ですので、「めぐりあわせ」の揺れは、分かるのですが、「となり■あわせ」は何故、揺れがあるのでしょう。(第4版まで遡らないといけないのかもしれませんが)
「〇〇〇+あわせ」の言葉に揺れがあるということは、複合動詞の転成と捉えるか、3拍の(転成)名詞+3拍の(転成)名詞と捉えるかの違いなんでしょうね。


[No.4763] Re: 廻り合せの切れ続きについて 投稿者:えむ  投稿日:2019/05/08(Wed) 00:54:45

「〜あわせる」「〜あわせ」を少し考えてみました。
やはり、「複合動詞からの転成」かどうかが基準になっているのでしょうね。

はっきりと、複合動詞からの転成と言えるもの、たとえば「照らし合わせ(照らし合わせる)」「申し合わせ(申し合わせる)」は、『表記辞典』「ナビ」ともに続けています。
「めぐりあわせ(めぐりあわせる)」も「ナビ」だけですが、続けていますね。

ついでに言うと、「誘い合わせる」「示し合わせる」「尋ね合せる」「綴り合わせる」「照らし合わせる」「睨みあわせる」などは、動詞の形でしか載っていません。
名詞化していないということでしょうか?
いや、もちろん、全部の言葉が載っているなんてことはありえませんが、実際には、「お誘い合わせのうえご参加ください」なんて名詞形でも言いますよね。

はっきりと、複合動詞からの転成ではない、と言えるもの、たとえば「答え合わせ」はナビでは切っていますし、ナビにはありませんが「衣装合わせ」「鬘合わせ」「口裏合わせ」「つじつま合わせ」もそれに準ずるだろうと思います。

ちょっと厄介なのが、「向かい合わせ」「背中合わせ」「隣り合わせ」で、『表記辞典』「ナビ」ともに、「向かい合わせ」は続け、「背中合わせ」「隣り合わせ」は切っているんですね。
私、最初は、「背中合わせる」「隣り合わせる」も「向かい合わせる」と同じくらい言うのではないかと思ったのですが、よく考えたら「背中合わせる」って言わないかもしれません。
少なくとも辞書の見出し語にはなっていません。
そして辞書を見ると、sumakkoさんがおっしゃるように、「隣り合う」はあるのですが、「隣り合わせる」は見出し語にないことに気が付きました。(辞書によっても違うかと思います。私が見たのは『広辞苑』と『大辞林』で、いずれも最新版ではありません)

なるほど、「向かい合わせ」は「向かい合わせる」の名詞形であって、「向かい合う」の名詞形ではない、ということなんですね。
「向かい合わせる」(他動詞)と「向かい合う」(自動詞)は一応別の言葉なのでしょう。
動詞の連用形が名詞形として使われる、という法則にてらせば、「向かい合う」の名詞形は「向かい合い」ですもんね。
それと同じに考えれば、「隣り合わせ」は「隣り合う」の名詞形ではない、ということです。
「隣り合わせる」という動詞があれば、「隣り合わせ」はそれの名詞形だと言えますが、それがないのだとすると、複合動詞の名詞形だとは言えない、ということなんじゃないかと思います。
ちょっとややこしい話ですが、そういう事情を考えると、この切れ続きの区別は、まあ納得できる気もします。

そして、肝心の「まわりあわせ」ですが、私自身は「まわりあわせ」は使わないことはないけれど、「まわりあわせる」という動詞形では使ったことがないかも…と思って辞書を見てみましたら、「まわりあわせ」だけがあり、「まわりあわせる」「まわりあう」はありませんでした。
もし「まわりあわせる」がないのだとすると、「まわりあわせ」は複合動詞の転成ではないことになりますね。
もちろん、辞書にないからといってそういう言葉がないとは言えない、というのは承知していますが…。

「めぐりあわせる」も、『大辞林』には見出し語としてありますが、『広辞苑』には「めぐりあう」しかありません。
微妙なところなのかもしれませんね。


[No.4764] Re: 廻り合せの切れ続きについて 投稿者:sumakko   投稿日:2019/05/10(Fri) 00:13:32

えむさん、詳細な考察ありがとうございます。
「めぐりあわせる」の語については、国語大辞典、大辞泉の見出し語になっていますので、あると言っていいのでしょう。国語大辞典によると、自動詞のようです。「令和の時代にめぐりあわせる」という風に使うのでしょうか。

「隣り合わせ」は、おっしゃるように、「隣り合う」は辞書にあるけれども、「隣り合わせる」は無いようです。個人的には、「電車で隣り合わせた人と〜」という具合に使用するように思うのですが、これは、インターネットの活用形辞書によると、『ワ行五段活用の動詞「隣り合う」の未然形である「隣り合わ」に、使役の助動詞「せる」が付いた形』だそうです。〜合うの未然形に使役の助動詞「せる」をつけると、確かに、色々な表現が可能ですよね。例えば、「いがみ合せる」、「戦い合わせる」とか。やはり、「隣り合せる」という、複合動詞は無いということでしょうか。

「まわりあわせ」については、「まわりあう」、「まわりあわせる」という語は、どの辞書にも、掲載されていないですね。インターネットで用例を探しても、みつかりませんし、この語はないのでしょうか。(断定はできないと思いますけれど)
新明解国語辞典(三省堂)では、「回り」を造語成分として扱い、「合わせ」と合して「回り合わせ」としています。このことから言うと、「まわりあわせ」は「まわり」+「あわせ」でしょうね。
「まわりあわせ」と「めぐりあわせ」は、同義であり、外形的にも同じ構造であるため、「めぐりあわせ」が、「めぐりあわせる」の転成であることから、同様に、「まわりあわせる」という語があるのではと思ったのですが。転成ならぬ、逆成ですね。
ですので、「廻り合せ」は「まわり■あわせ」と切るのが妥当なのでしょうか。


[No.4765] Re: 廻り合せの切れ続きについて 投稿者:えむ  投稿日:2019/05/11(Sat) 14:01:11

そうですか、「めぐりあわせる」という動詞はちゃんと存在するので、その名詞形の「めぐりあわせ」は続けていいんですね。
すみません、私、「めぐりあわせ」は「ナビ」だけなんて書いてしまって、大間違いでした。
みなかみさんが「表記辞典6版の「あわせ」のところにあります」と書いてくださっているのに、すっかり頭から抜け落ちてしまって…。
『表記辞典』もちゃんと載せていてくださったんですね。
「衣装合わせ」「鬘合わせ」などを切ることも。

sumakkoさんがおっしゃる「電車で隣り合わせた人と〜」って、普段私も言います。
そのときの「隣り合わせる」は、使役形の「隣り合う+せる」とは少し意味が違うような気がするんですが…。
「いがみ合せる」「戦い合わせる」「殴り合わせる」「見つめ合わせる」「話し合わせる」などは、「いがみ合う」「殴り合う」「話し合う」という行為を「させる」という、まさに使役形なのですが、、「電車で隣り合わせた」の場合、「隣り合う」という行為を誰かに「させた」わけではありませんよね?
むしろ、「めぐりあわせる」のように、自然の流れでそうなっちゃった、というような意味で使うと思います。
「隣り合う」に使役の「せる」が付いたもの、というのは、形式的な語のでき方のことであって、意味の話ではない、ということなのでしょうか?

「向かい合わせる」は2通りの意味が考えられそうです。
「向かい合わせになる」と同義で「電車で向かい合わせた人」というふうにも使うし、「向き合わせる」と同義で「自分の罪と向かい合わせる」「真剣に課題と向かい合わせる」などとも使いませんか?
後者は使役の「せる」だと思うのですが…。
その場合は「向き合わせる」の俗用とか誤用だったりするのでしょうか?
使役だと言われる「隣り合わせる」のほうが、辞書の見出し語にある「向かい合わせる」より、使役の意味が薄いように感じてしまって、何やらもうひとつ釈然としません。

いずれにしても、「まわりあわせ」は、複合動詞の転成ではないので切る、ということでよさそうですね。


[No.4766] Re: 廻り合せの切れ続きについて 投稿者:sumakko   投稿日:2019/05/13(Mon) 00:11:44

本当ですねえ。「電車で隣り合わせた人と〜」という言い方には、使役の意味はありませんよね。それで、次のように考えてみました。いささか、三段論法めくのですが。
広辞苑では「合わせる」の文語体は、「あはす」となっています。
旺文社の古語辞典によりますと、「あはす」は他動詞で、その語義の説明で、最後の12番目は、「動詞の連用形に付いて互いに…する、いっしょに…する意を表す」とあります。
広辞苑には「隣る」という動詞(五段活用)が掲載されていますので(私は一度も使ったことはありませんが)、この「隣る」の連用形に「あはす」がついて、「隣りあはす」という複合語になり、その「互いに隣になる」という意味が、現代文にも引きずられて、「隣り合わせる」という用法になっているのではないかと思います。「向い合わせる」「めぐりあわせる」(運命というような、あるものと、一緒にめぐりあうと言うような意味になるのでしょうか)も同様ではないでしょうか。
上記三語のうち、辞書の見出し語になっているのは、「めぐりあわせる」(自動詞)だけですが、表記辞典、ナビでは「めぐりあわせ」「むかいあわせ」は続け、「となりあわせ」は切っていますね。個人的には、「となりあわせ」も続けてもよいようにも思いますが、「隣る」という言葉が、日常使わないので、複合語として考えにくいということでしょうか。
この解釈の違いが、みなかみさんのデータベースの、「となり■あわせ」:4タイトル、「となりあわせ」:5タイトルの揺れの原因になっているのですかね。


[No.4767] Re: 廻り合せの切れ続きについて 投稿者:えむ  投稿日:2019/05/15(Wed) 00:15:21

おお、なるほど!
「隣り合わせる」「向かい合わせる」などの「合わせる」は、「互いに〜する」「一緒に〜する」という意味なんですね。
これですっきりしました。
「居合わせる」「来合わせる」「泊まり合わせる」「乗り合わせる」なんかが、そういう意味の「合わせる」なんでしょう。

そして、「隣る」ですか…。
確かに、どこかで出会ったことがある記憶はありますが、もちろん自分で使ったことはありません。
もともとはこの動詞が先にあり、その連用形が「となり」という名詞になり、そちらのほうが普及して今に至るのに対して、動詞のほうはあまり使われなくなったのでしょうね。
だから「隣り合わせ」を複合動詞の転成とはとりにくい、というのは、とても説得力があり、腑に落ちました。
その微妙な複雑さが、みなかみさんが探してくださった「表記の揺れ」を招いている、というのも納得です。
sumakkoさん、謎の解明、ありがとうございました。

それにしても、ひとつひとつの言葉の切れ続きにこれだけの背景というかいきさつがあるとは…。